(続き)
新蒲原で再び東海道線の下り電車に乗り込み、次に向かったのは焼津の寿屋です。焼津への到着は18:15頃。駅のコインロッカーに荷物を預け、身軽になって南口の商店街を歩きます。地図は持っていなかったのですが、約1年前に来た時に彷徨ったおかげでバッチリ1発で到着しました。

時刻は18:30。変わらぬ佇まいにホッとしながら、暖簾を書き分けお店に入ります。入って右側の厨房で「いらっしゃい、どうぞ」と店主の優しい声が心地よく響く中、左側に2つあるテーブル席には手前にご夫婦が、前回ボクがお邪魔した向こう側の席には男性おひとりがいらっしゃいます。どうしようか迷っていると、ご主人が「どちらでもお好きなところへ。そちらでもいいですよ」と右奥の小上がりを薦めてくれました。それではと、靴を脱いで小上がりにお邪魔します。テーブルに小さなホワイトボードを持ってきてくれて「今日はこんなんでやってます」とご主人。燗酒をお願いして、しばらくメニューを眺め何をいただこうか悩みます。「鮪さしみ」「鮟鱇」「蛸」「おでん」「へそみそ煮」「太刀塩焼き」「バイ貝」「のどぐろ煮魚」「太刀フライ」と並びますが、悩んだ結果鮪をいただくことに。ご主人が氷冷式の冷蔵庫から鮪の短冊を取り出し、丁寧に包丁を引いてくれてます。

燗酒を呑みながらそんな様子を眺めます。前回お邪魔した時にも感心したのですが、店内は趣のある古い造りながら手入れが行き届いていてとっても綺麗。しみじみと店内を見回していると、刺身が出来上がってきました。

綺麗な霜降りの大トロの部分もあります。お味のほうは、これがまたとろっとろで、濃厚な味わいのマグロのお刺身です。これは旨い。お酒が進みます。燗酒をおかわり。

テーブル席の常連さんは、電気コンロの上にお皿を乗せて温めながら召し上がってます。どうやらこれがおでんのようですね。これも気になりますが、マグロのお刺身が結構ボリュームがあります。ツマがオニオンスライスなのも嬉しいですね。いいアテになります。とてもボリュームたっぷりなおでんには手がとどきそうにありません。燗酒をもう1本もらっちゃいます。

こちらでは藤枝の杉錦のお酒をお使いとのこと。注文の都度ご主人が湯煎して燗付けしてくれて、「いかがですか」と温度を気にしてくれます。何気ない気遣いも温かいですね。それに駅から離れた立地からか、何とも心地の良い静寂に包まれています。何だかこのまま、このお店に染み込んでいってしまいそうな感覚になりながら、ゆるゆるとお猪口を傾けます。

入り口そばのご夫婦は、どなたかのご紹介でいらっしゃったようで、このお店をとっても気に入ったご様子。あとからもうひとかたいらっしゃったお客さんは、常連さんのようで先客の常連さんともおなじみの様子。お隣に着席されました。そしてボクは3本目のお酒が空き、そろそろごちそうさまをすることに。するとご主人、前回お邪魔した時に忘れた、2008年のカレンダーが入った手提げを持ってきてくれました。てっきり静岡駅のトイレに忘れてきたと思っていた、2008年のカレンダー。1年以上も、ずっととっておいていただいたようです。いやはや、申し訳ありません。ご主人に「またいらしてください」と見送っていただいて、お店をあとにします。

1時間とちょっとの滞在。お会計はいくらだったかすっかり失念ですが、まさにプライスレスなひとときでした。幸せな気分で、焼津駅へ向けて歩き始めたのでした。
(つづく)